長崎県民間団体自殺対策事業について 長崎県における自殺者数は平成10年より年間400人を超え、これは平成20年に400人台のラインをきるまで続きました。国も、1998年以降毎年3万人に上る自殺者数という実態を踏まえ平成18年に「自殺対策基本法」を制定・公布し、本格的に国内の自殺対策を実施するための法整備を整え、これを受けて各都道府県においても地域社会の運営に対する様々な角度から、本格的な自殺対策に乗り出しました。 長崎県においても平成19年に「長崎県自殺総合対策5カ年計画」が策定され、その一部となる「民間団体自殺対策事業」の募集が行われました。本NPOは2010年(平成22年)秋に初の採択を受けて以来、これまで4年間にわたり本事業にたずさわっており、長崎県内各地でメンタルヘルスの普及啓発・相談事業などを実施してきました。現在は5期目の事業を開始しています(2014年6月現在)
本事業に於ける基本的な方向性 ご存じの通り長崎県は、我が国で最も多い島嶼部を持つ都道府県です。五島や壱岐対馬を始めとして、多くの方が離島に於いて生活されています。その離島での生活でより一層の充実を図らなければならない課題の一つが、医療サービスです。特に精神医療については、地域の高齢化に伴う認知症の増加、また介護疲れによるうつの発生や若年者の成長期での精神的な障害など、これに対して距離・時間など地理的条件等により本土部と等しい水準で且つ十分なケアが中々提供しづらい状況であったと思われます。 そこで本NPOは、本事業を計画するにあたり本県離島部を事業対象地域の一つに設定し、本土部と並行してメンタルヘルスの普及啓発を行っています。長崎大学病院精神科の医師や臨床心理士らが講師となり、認知症やうつなどをテーマにした各種セミナーの実施、またその際簡易な心理検査を参加者に実施してもらい、自身のメンタルヘルスが今どういう状況か、ご自分でも把握して頂くなどの試みを行っています。
「シネマ・サイキアトリー」を用いたセミナー 認知症をはじめとした多くの精神疾患について説明する際、それを介護などで経験された方には理解や納得が容易でも、直接経験が無い方にはそれが難しいという点が挙げられます。そこで理解を深める事を狙いとし、セミナーの途中では扱う疾患を題材とする映画作品など、映像による資料も視聴して頂いています(シネマ・サイキアトリー)。著作権手続きなども必要ですがそれを差し引いても、講演内容の説得力が非常に大きいと実施後に好評を頂いています。
インターネットを活用して、空間・距離の問題を克服 またセミナーの実施にあたって活用しているのが、インターネット通信です。時間や天候等により現地への移動が困難な場合、現地会場とインターネット通信によってつなぎ、本土にいる講師がこれを介して会場に集まる参加者へ語りかけるという、遠隔方式での実施を行うこともあります。これにより離島部での事業を天候等に左右されず、より確実に実施できるようになりました。 最近ではセミナーの実施だけでなく、長崎大学病院精神科の医師による遠隔相談にもこのシステムを活用し運用実施しています。今後の成果によって、多数の離島生活圏を持つ長崎県固有の状況を、ICT(Information &Communication Technology)を活用する事で本土部と離島部の格差解消を図り、将来的には長崎県の事情に合う遠隔医療システムの構築という、将来的な可能性が徐々に拓かれてきています。