●うつはカラダとココロの病気
WHO(世界保健機構)で、1995年には困っている病気のランキングで、うつ病は第4位だった。でも、2020年には1位が心筋梗塞、2位がうつ病と言われています。うつ病はすごく重要な疾患になって来ます。うつ病は心の病気だというのは間違いないですが、実は率直に言いますと半分は体の病気ですね。
「夜寝れない。食欲がない。疲れやすい。頭痛がする」
こういう体の症状が出て来ます。体と心の両方の問題があると言う事をまず理解してください。
うつ病になった方が最初に受診するのは内科が多いです。女性だったら婦人科。頭痛がある方は脳外科。精神科を受診する人は20%程度です。
●最初に受診するのは?
●身近なうつ病
うつ病と言うのは生涯に男性だと10人に2人、女性だと10人に3人位なってもおかしくない誰でも罹る“心の風邪”と言われています。
一見元気そうな芸能人の方もお薬、休養など精神科的治療を受けて良い状態になった人もいます。
年間3万人以上が10年以上もの間、亡くなっている日本は本当に自殺大国。率で言うとアメリカより自殺が多い。
世界中どこの統計を取っても女性がうつになりやすい。自殺するのは男性が多いです。でも、出産後のうつというのは重篤です。
●うつ病になるきっかけ
うつ病になるきっかけは色々。 “昇進” “子供の巣立ち” “引越し” “出産”
良い事、悪い事ということだけではなくて、今までの生活パターンが変わるって言う事がきっかけになることもあります。
●うつ病の症状
最低でも2週間、出来たら一ヶ月続く症状ですが、本当にやる気がない、興味の消失、侘しい、淋しいという気持ち。朝早く目覚めて午前中調子悪いという早朝覚醒、日内変動が見られます。月曜日午前中には自殺が多いですね。
時折、過眠・過食の“うつ”があります。
眠れない。決断力がない。意欲がないといった症状のほかに、「申し訳ない」という気持ち、罪悪感が出ることも大事な症状ですね。
身体の症状としては、自律神経がらみの症状が出て来ます。イライラ感やじっとしていられないといったものですね。イライラして落ち込む人は自殺に注意が必要です。
うつ病かどうかが、ほぼ分かる2つの質問があります。
1)気持ちが沈んだり滅入ったり憂鬱な事になったりする事がありますか?
悲しくなったり落ち込んだりすることがありますか?
2)仕事や趣味など、普段楽しみにしている事に興味が感じられなくなっています か?今まで好きだったことを今でも同じ様に楽しんでいますか?
●うつの原因
うつは“脳の病気”という理解の仕方があります。
脳の細胞には少し隙間があって、セロトニンといったホルモンが行き来しています。
“うつ”状態では神経間を行きかうセロトニンの量が少ないと考えられています。
●うつの治療
“うつ”を治す薬は、“抗うつ薬”という薬を使う必要があります。
抗不安薬や睡眠薬で、不安とか睡眠は改善されますが、「生きる意欲」、「悲しい」「淋しい」という根本のものを治すには、“抗うつ薬”を精神科のトレーニングを受けた先生達がきちっと投与する事が大事です。
まず休養。休んでもらって“抗うつ薬”を少しずつ、休養が保障された上で抗うつ薬を充分な量、充分な期間投与する。
最初の1,2週間は吐き気、むかむか感といった副作用が出やすいです。
一種類の薬を充分な量、充分な期間投与すると7割の人はよくなります。
僕は、7割をある治療で良くすると言うのは、病気としては、まぁだいたい克服したと言えるのではと思います。どんな病気でも3割位は、こじれる場合があります。そこには引き続き治療が必要となります。「頑張りなさい!」と言うのはやめましょう。
年を重ねていくに従ってうつ病にもなり易いですから、若い頃の様にバリバリ働けるようになるかと言うとそうはいかないかもしれない。でも大体、年齢に合ったような生活を、ちょっと注意すれば出来るようになることはあります。ですから、目標の設定をどこにするかって言うのは大事ですね。
●生活習慣病とうつ
生活習慣病とうつとの関係の話をします。
「癌」告知は、本当に大変なショックです。1回良くなっても、再発の不安を感じたり。“癌とうつ”が関係する場合は多いです。
その他にも、“心筋梗塞”、“高血圧”、“糖尿病”といった生活習慣病とうつは深い関係があります。
コレステロールが高い人より低い人の方が不安やうつ病のスコアが高いというデータがあります。これは血液に流れる脂肪と関係があります。
ヒベルンという人が「魚を食べる国の人ほどうつ病患者が少ない。」という研究結果を発表しています。
治りにくいうつ病の方に対して “魚油(EPA)”が有効であるというデータがあります。魚油(EPA)というものを飲ませたら、4週間で治り難いうつが改善したというものです。
小学4年生から中学生に対するデータで、魚が好きか嫌いかで“うつ”の予備軍が増えてくるというものもあります。栄養が心を癒すということです。
これから“うつ”に対してどうしたらいいでしょう?
忙しい時にやらなきゃいけない事を全て書き出したり、波風立てない嘘をつくという余裕があるといいのかもしれません。
ご静聴ありがとうございました。
(お話:小澤寛樹先生 平成21年3月11日 長崎歴史文化博物館にて) 上へ
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