●はじめに
100歳長寿の傾向というものを前に調べたんですけど、男女共通であるのはポジティブな方が多いということです。女性は能天気な人がいい。男性はやや神経質、自分の体について気にかかる人が長寿である傾向があるみたいです。
昨日テレビで認知症の番組をやっていました。その中で、75歳以上の方は自動車免許更新のときに検査を受けなければならなくなるという話が出ていました。
認知症でも結構、車を運転する方は多いですね。普段の道順は覚えているのだが、工事をやっていてその道が通れないとわからなくなって、ガス欠になるまで走って県外で見つかったこともあります。アルツハイマーの人にこのようなケースが見られることがあります。
他にも、ピック病という病気では人柄、人格、モラルと関連する、前頭葉、側頭葉の細胞が減っていくので、急に怒りっぽくなったり、自覚無く万引きをしたり、非常に危ないですが高速道路を逆走する率が高くなるということも見られます。
●早期発見のポイント
早期発見のポイントとして一番簡単なのは、最近気になるニュースはなんですか?と聞くことですかね。認知症の人はすっと具体的に答えることが出来ず、「最近テレビ(新聞)を見ないから・・」という回答をする人もいます。いきなり「100-7はいくらですか?」と聞くと怒られるからこれは効果的だと思います。
中核症状の記憶障害以外に周辺症状が出てくることもあって、夕方になると不安になってそわそわする、元気が無くなったり、急に泣き出したり、怒り出したり、徘徊が見られたり、物取られ妄想がでてきたりなど、周辺症状が先に出てくる認知症もあります。
50歳代になってそれまでのキャラクター(性格、行動)が変わってしまう、今までやっていたことができなくなるという場合に認知症を疑います。物忘れ以外の症状も大事ですね。20歳代、30歳代の人にはうつ病、統合失調症など精神科の病気を疑います。
医者にも得意不得意があるので、病院にいってはっきり言ってもらえないときにはセカンドオピニオンも利用して,
いろいろな人の意見を聞くことも大事だと思います。
アルツハイマー病では脳が萎縮していきますが、脳の大きさにも個体差があるので、お金がかかりますが、元気なときのMRIを撮って持っていて、後でくらべてみるのも良いかもしれません。
●アルツハイマー病
アルツハイマー病についてもう少し詳しく見ていきましょう。
脳に溶けにくいタンパク、アミロイドタンパクといいますが、十数年かけて溜まっていき、神経に対して毒なので、神経細胞が死んでいきます。
脳という臓器が他の臓器(肝臓、心臓など)と違うところは、肝臓は右、左で同じ機能で、生体肝移植など移植可能だが、脳は移植が難しいでしょう。
脳の特徴は部分によって機能が違うことです。「前頭葉、側頭葉」は人柄、創造性、注意ということに意味がある。「小脳」はバランス。鳥・イルカはここが発達しています。「後頭葉」にショックを受けると、目が見えなくなる、変な風に見える、幻視という症状が出ます。
アルツハイマー病では、空間認識を担う「頭頂葉」という部分が侵されることで徘徊、迷子になったりします。脳のどこに溶けにくいタンパクが溜まるかということによって症状の出方が違いますが、一般的に「海馬」という記憶をつかさどるところの細胞が壊れるので物忘れが起きます。記憶、場所、パートナーの名前、子供の名前がわからないといった症状が出ます。
このような症状を扱ったものに「君に読む物語」という物語があります。なかなかドラマチックな話です。
脳の細胞が小さくなっていくわけですから、脳の機能が侵されていくことになります。認知症の方の死亡原因は肺炎が多いです。寝たきりになると、飲み込みが悪くなり、誤嚥が起こりやすい。
転倒→骨折→寝たきり→肺炎で亡くなるという流れが多い。やはり介護は大事で、命と密接に関係しています。
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●アリセプトの効果
アリセプトの話をします。アリセプトには、記憶にかかわる「アセチルコリン」という物質を増やすような作用があります。根本治療ではないです。
アミロイドが溜まって細胞が壊れていくという、アルツハイマーの原因をカバーするものではないが、同時におこるアセチルコリンの減少を補うことで効果があると理解してください。
病気の進行を止めるわけではなくて、遅くする効果です。
電話を取れない方が、孫の結婚式のスピーチが出来るようになったという、すごく効果があったケースはありました。長い目でみると徐々に進行していくので、早めにつかったほうがいいと思います。
仮に私の兄弟が全員認知症になっているとすると、私も来年50歳になるので、飲んだ方がいいと思う。ただ、保険でそのような使い方は認められていないですが・・。
当然副作用もあるが、早めに飲んだほうが良いと思います。早期発見、早期治療でよくなるということは他の病気と同じです。
●認知症と似ている軽度認知障害
認知症と似たものに軽度認知障害(MCI:mild cognitive inpairment)というものがあります。日時は分かるが計算がうまく出来なかったり、微妙な物忘れがあるというものですが、1年間に10パーセントほど認知症に移行する(特にアルツハイマー病)と言われています。この段階で検査、薬物療法をしたほうが良いですね。
●PETを用いた診断
アミロイドとは何かということですが、溶けないタンパク質で、蓄積は50歳ぐらいから始まると言われており、どのくらい溜まっているかということがわかれば治療の役に立ちます。
その方法としてPET診断があります。PETは高価な機械で、長崎では西諫早病院にありますが、ガンを見つけるのに有用で、使用されています。
アルツハイマーはアミロイドがどのくらい蓄積されているかを画像で見ます。
PETを使ったアルツハイマードック、認知症ドックという話も出てきていますので、50歳ぐらいになると受けるといいかもしれません。
認知症になるかどうか予想する方法として、遺伝子レベルでは、これは血液型みたいなものですが、アポリポタンパクE4型という遺伝子を持っている人が認知症になりやすいというデータがあります。1万円~2万円で血液検査が出来ます。
髄液をとって、タウタンパクという物質を調べる方法もあります。まだ研究的な段階で、保険で認められておらず高価です。それらの傾向があったとしても絶対認知症になるかというとそこまでは言えませんが、所謂、タバコ吸っている人ががんになりやすいというような程度のリスクはあると考えていいと思います。
また、アルツハイマー病以外の認知症の方はアミロイドの蓄積はないので、認知症の判別やどの程度認知症が進んでいるかという判断にも役に立ちます。
最近のニュースをたずねてみたり、時計を書いてみたりするのは簡単に出来るので良いと思います。そして心配なときは私に相談してください。
このような図(右上図)を描写することがアルツハイマーの人は苦手です。こんな方法もあります。
今の時代としては「もの忘れ外来」から「アルツハイマードック」へという流れです。ドックと言うように保険診療ではないですが、予防、早期発見、早期治療に役に立ちます。
●認知症の方への対応
次に認知症の方への対応についてです。
「その世界にあわせて対応する」言うのは簡単ですが、どうでしょうか?
「いいこと」も「わるいこと」も、感情が伴う記憶が定着しやすいです。
皆さんもエピソードがあるときの記憶の方がよく残っていると思います。
ケネディ暗殺や9・11のテロの時に何していたかなどは、皆さんも結構覚えているのではないでしょうか。激しい情緒的な刺激を伴う記憶の定着は強いです。
認知症の人に「なにやってるのよ!」と言うのは「怒られた」という記憶が残りやすい。いい事や日常的なことの記憶は残っていなくて、「この人はいつも怒っているな」という認識をすることもあります。感情的な記憶は残りやすいということを覚えておいてください。
また、身近な人間に対して情緒的な反応が出やすいです。
アルツハイマーの方は外面がいい人が多いです。私の診察室にも夫婦で診察に来て、ニコニコして話すが、一人になると「実は・・」ということが多いです。
記憶障害への対応テクニックですが、柔軟に考えることは大事です。
事実を追求せずに、相手の意見を否定せずに、本人が心地よく過ごせるように。
裁判しているわけではないので、言い争っていてもしょうがないです。
自分が認知症の方のように、瞬間瞬間に生きていたとしたら・・と想像する能力は介護者には必要だと思います。
「幻視」は本人には実際に見えているものなので、受け止めるということが大事です。
物取られ妄想、妄想を否定してもしょうがない。妄想を茶化すことはあるが、否定してもしょうがないです。
食行動については、食べなくなることも多いですね。あまり続くようであったら病院に相談したほうがいいです。
興奮への対応は、パートナーが高齢の場合や介護者が女性の場合は対応が難しいです。身の安全を確保することが大事です。相談できるような交番が近くにあるといいですね。医者、認知症疾患センターなどに事前に相談しておくことも良いと思います。
よく子供の虐待の話がでますが、老人の虐待も子供虐待並みに多いかもしれません。危機介入的な対応が大事です。
冬で徘徊すると命にかかわるので特に危ないですね。
「いまどこサービス」、「GPS」などがあります。携帯、GPSはそれ自体を忘れることもありますが・・。
昼夜逆転の問題は、医者の立場から言うと薬をうまく使うことによって対処できます。
昼にお日様に当たることも大事だと思います。
失禁については、やはり、赤ちゃんではなく、プライドがあるので隠すこともあります。押入れ開けたら隠していたものが出てくることもあります。
「かくしてどうするの!」と怒らないで、プライドを尊重して対応するということが大事です。
失禁をほっとくと膀胱炎、感染症につながることもあります。オムツを嫌がる方も多いが、今はいろいろなオムツが出ているようです。
排泄のパターンをつかむことも大事です。9時に水飲んで、11時にトイレに行くというリズムがあったら、トイレに行く時間になったらトイレに誘導するなど、その人の生活リズムと把握することも大事ですね。
「ぼけをを理解する為の原則・法則」をご紹介します。
もっとも身近な人に対して症状がひどく出ます。瞬間瞬間の記憶しかなく自分が正しいと信じていますので、反省しづらく、理不尽に周囲が感じることもあります。また、正常とぼけの部分がまだらでときどきシャープな反応が返ってきたりします。
「ぼけと付き合う本音10か条」をご紹介します。
冷静さが必要ですね。介護者側のガス抜きも大事です。デイケア、ナイトケアの利用、介護を一生懸命やったら温泉に行くなどご褒美を設けることも大事です。
男性の協力も大事ですね。おじいちゃんが暴れだしたら結構大変です。昔漁師をやっていた方がベッドを持ち上げたこともありました。
あまり先のことは考えないことです。今、この場、今日一日。介護や病気だけの問題だけではなく、誰でも未来を考えると悲観的になります。
コントロールできるストレス、コントロールできないストレスがあるので、コントロールできることを積極的に行ってはどうでしょうか。
介護するのを得意な人はいますが、介護されるのを得意になるのはとても大事だと思います。
抱え込まないように、困った時に相談をできるという相談力も大事です。アイディアを出し合って知恵比べをしていければいいんでしょうね。
●アルツハイマー病の根本治療への道
2017年にアルツハイマー病の進行を阻止できるのではないかと言われているそうです。2024年は大地震の予知が可能になるかもとのことで、それよりは現実的です。
今の20歳代の人は「昔、アルツハイマー病ってあったよね」という時代が来るかもしれないですね。
ネプリラシリンという物質に注目した新しい薬も治験中ということで、今後出てくるかもしれませんが、副作用も色々あるので、薬になるのにはまだまだかかると思います。
最近、「抑肝散」という漢方薬が注目されています。薬局にも売っているが、医者に出してもらう用が安いですね。
記憶力を良くするというよりも、興奮したり、落ち込んだり、いらいらしたりを抑えるために使います。カンは「カンの虫」のカンです。
あまり強い薬を使うと転んだりする、もしかすると死亡につながる副作用があるので、漢方薬が使いやすいということです。
ワクチン療法というものも研究中です。動物では効果があったが、フランスでの治験で脳炎が出たので、まだ研究の域です。この研究が進むと、進んだ認知症も改善するかもしれないですね。
●アルツハイマー病以外の認知症
アルツハイマー病の割合は認知症の全体の約半分です。残りの20、30パーセント位が脳梗塞・脳出血からくる認知症です。もう20パーセントぐらいがレビー小体病。5パーセントぐらいがピック病。その他にも効いたことがないかもしれませんが、正常圧水頭症、クロイツフェルト・ヤコブ病、アルコール依存症に伴う認知症などがあります。
脳梗塞・脳出血による痴呆の経過は直線的に悪くなっていくと言うより、脳梗塞が起こるたびに階段状に悪くなっていくことが多いです。
認知症と似て非なるものに、うつ病、せん妄などがあります。
うつ病については前にも話したので、今回はせん妄のビデオを流します。
― ビデオ ―
よく一般、救急病院などで、入院したてで状態が悪いときに、寝ぼけのような意識の混濁が起こることがあります。認知症のように見えますが、これをせん妄といいます。
魚、野菜、海草をあまり食べない人がアルツハイマー病になりやすいというデータもありますね。
●認知症疾患医療センター
次に、長崎で認知症になったらどうするか?という話をしたいと思います。
認知症疾患医療センターというものがあり、出口病院が長崎市ではがんばって対応しています。
ここには、ソーシャルワーカーがたくさん居て、地域の包括支援センターからの相談、ケアマネージャー、病院からの相談や、当事者の方からの直接の相談を受けています。
このセンターで全ての相談が魔法のように解決するわけではありませんが、まず、情報を集約して、何が出来るか、ということを一緒に考えてくれます。
病院の紹介、地域の情報や協力している大学病院へ検査の紹介をしたり、介護のサービス、グループホーム、遺産・契約の問題から本人を守るための対応についてなど、相談に乗ってくれます。
実際にセンターでどのような対応がされているかをいくつか紹介します。
-ケース紹介―
本人が病院にいかない場合は看護師さんが自宅に訪問する「訪問看護」を行い、そして、訪問の人と本人さんが仲良くなってから、例えばインフルエンザの予防接種をするというきっかけを作って、病院受診に持っていく方法もあります。
本人が病院に行かなくても、周囲の人が動くことで結構変わっていきます。
放火の恐れがあるなど危機的なケースは、行政と相談して、保護的な精神科病院に強制的に入院(措置入院といいます)する検討も行います。
皆さんが気軽に相談できるようなシステムを長崎で作らなければと感じます。しかし、お金がかかることでもあるし、なかなか簡単にはいきませんが、長崎の皆さんが、こんなシステムが必要だというような声をあげてもらうことが大事だと思います。
●対応のヒント
その人が何を大事にして生きてきたか、どのような生活を送ってきたかを知ることはとても大事です。
すると、その人が瞬間瞬間で生きていたらどのようになるかなぁ、どのようなことを求めるかなぁということを想像しやすくなります。
「○○さん、昔鉄道員してたんですねー」など、昔のエピソードを話すと反応があることがあります。長くは続かないですけど。その5分、10分を利用して薬を飲んでもらったり、点滴をさせてもらうことも出来ます。
皆、自分の脳でしか理解できません。
10分前、20分前の記憶がないと自分ならどうなるかなぁと想像することから、余裕も生まれるのかなぁと思います。
【質 問 会】
私も指導医なのですが、日本老年精神医学会のホームページは信頼できると思います。
認知症の初期状態の判別には、時計の絵、サイコロの絵を書いてもらうのは、早期の検査としていいのではと思います。
お母さんがグループホームにいらっしゃるとのことですが、まず、グループホームの人たちに何か問題がないか聞いてみることです。
おかあさんの人生の振り返り、回想法という治療法もありますが、昔のアルバムを持っていって一緒に見ることがいい場合もあります。逆に昔のことを思い出してがっかりすることもありますが。
けれど、「悲しい」ということも、感情を揺り動かすという意味では記憶に対して総論的にはいいと言えます。
自宅にいるのに、家に帰りたいということですが、これは論争してもだめですね。
とりあえず家の周りを一回りして、家に着いたよ、ということぐらいで収まればそれをやることはいいじゃないんでしょうか。
症状を「点」で考えないことですね。生活の過ごし方が問題かもしれませんし、昼夜逆転しているかもしれません。
人間ってなぜか、夕方になると心細くなるものですよね。根源的なものかとも思います。認知症の方で夕方不安になる人は多いですね。お薬を使うこともあります。
北欧の事情ということですが、フィンランドの人口は500万人くらいで、北海道と同じぐらいです。それで高福祉でやっているのでマンパワーが違いますね。
それと発想も違います。長崎では病院の院長は医者だと思いますが、フィンランドの院長がソーシャルワーカー、作業療法士、看護師も多いです。
そのように、社会のシステム、医療のシステムの考え方、発想が日本の医療とは違うと思います。
しかし、WHOは日本の医療システムは世界一といっていて、北欧より良いと言っています。実際に世界で一番長生きしているのは日本人ですし。このシステムがこのまま維持できるか分かりませんが、他の経済とかの分野と比べたら、結構国際的にがんばっているんじゃないかと思います。
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認知症の予防策ということですが、知的な活動が高い人、学歴が高い人は認知症になりにくいというデータはありますね。そういう意味では、若いうちに勉強をするということは予防にいいです。
規則に縛られたりする固い職業の人の方が、柔軟に物事を考える職業の人よりも認知症になる人が多いような印象はありますね。
アルツハイマー病になりやすい人の印象としては、人口が多いこともありますが、学校の先生、警官、銀行員など固い職業の人がちょっと多いかなというのが私の勝手な印象です。
質問で出ていた作家、政治家さんともどちらかというと自由奔放なタイプではないような気がしますね。
脳もストレスで傷つくので、あまりストレスを受けないような知的活動がいいのかもしれませんね。
認知症の最終症状ということですが、脳が縮んで、呼吸ができなくなって亡くなるまで進行することはないようですね。寝たきりになると感染症にかかりやすいですし、誤嚥から肺炎になるケースも多いです。
アルツハイマー病の進行はゆっくりと進むんですが、早い人は2~3年で一気に進むこともあります。がんでたとえると5~10年の方も居れば半年で進む方も居るように、個人差があります。
介護の人が今は疲弊しているので、まずはマンパワーでしょうね。給料を上げるなどすると質も上がるでしょう。
それには、そのような税負担を皆さんがOKといってくれるかということになると思います。
人材もいなくなりますから、人口の多い外国の方に手伝ってもらうという試みも必要ではないかという気がします。
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運動、脳トレについてですが、これは誰も実証していないですね。
動物レベルで運動が多少脳の細胞を増やす効果がありますが、これはネズミの話なので、人間でどうかということはわからないです。脳トレはあくまでゲームですね。何万人に脳トレやって効果があったという確認は出来ないので、確かめようがないです。
医学の知識は昔言われていたことが今と全く違うことが多いです。
例えば赤ちゃんを寝せるのに昔はうつ伏せがいいといわれていましたが、突然死を招く危険性があると今は皆さん知ってますよね。
医学がそういう領域であるということは頭に入れておいたほうがいいかもしれないですね。
医学の領域ではまだ分からないことがたくさんあるので、私は、現代医学ではここまでしかわかっていないということを説明したほうがいいと考えています。
サプリメントについては、毎日魚油ばかり摂っていると、脳出血を招く可能性もありますからバランスが大事です。薬のようには考えないほうがいいですね。
アリセプトは、世界的な評価が高い薬ですね。アルツハイマー病もですが、レビー小体病に効果があるかもしれません。
レビー小体病では、幻視、パーンキンソニズムからの転倒が起こりがちです。
これに、アリセプトを使うと劇的に効果があるときがあります。やはり、使い慣れている先生のところにいくのがいいですね。
また、精神科の薬をもっとうまく使うのがよいこともあります。
かかりつけ医を大事にしながら、精神科医と連携をとっていくのがいいと思います。
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【会場からの質問】
・アルツハイマーになると、検査で必ず分かるものなのでしょうか?
・本人に病名を知らせた方がよいものか迷っています?
・家族にできる事を教えてください
【回答】
画像診断で問題がない場合は絶対認知症じゃないとはいえません。
認知症の診断には、まず診察での検査で症状が出ているのが大前提です。そして、症状が出ているということはなんらかの所見がある可能性があるということです。
MRI、SPECTなどは診断の裏づけに使います。
告知の問題は大事な問題ですね。
その方がどんな方か、本人の歴史を知ることが大事です。きちんと受け入れられる方は多くないと思います。
本人のプライドが知的なことに関連していると、かなりショックだと思います。
何を大事に生きてきたかにもよります。その人が未来に対して前向きな人だったら、例えば絵を描く人、小説を書く人で残された時間があと半年ですよというときは、告知することでこの半年で何かいいものを描くように取り組むかもしれないので、告知してもいいケースかもしれないですね。
唯一の生きがいができなくなるのは酷かもしれないし、家族との関係もあるので、難しいですが、まずは、その人が何を大事にしてきたかということを考えることは大事だと思います。
家族にはある程度の客観性が大事です。三歩下がって見て何ができるかを考えることです。
「・・するべき」は考えずに柔軟に。絶対家族だけでみなくてはいけないわけではなく、グループホームで楽しくやっている人もいますし、デイケアをうまく利用する方法もあります。考え方が固定しない方がいいですね。皆がハッピーになる考え方が大事です。
(お話:小澤寛樹先生 平成21年12月16日 長崎歴史文化博物館にて) 上へ
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